お店は、入り口の扉周辺も凝った造りだった。

ステンレスの丈夫な扉に、つや消しの黒い塗装がされ、

アプローチの頭上の照明に仕掛けがしてあり投影された光が、

扉にアルファロメオのエンブレムを浮かび上げるように設計されている。

オーナーのアルファロメオ好きが伺える。

入り口の扉を開けると、「カラン。カラン。」と軽やかな音が響き、

室内からは70年80年代のソウルな音色がやさしく耳を打つ。

U字のテーブルが2つとカウンター席が10席。

カウンター越しに背面が総ガラス張りになっており、ボトルの脇から見える夜景が客の目を潤す。

お客は、諒たち以外には誰もいなかった。

見渡す二人を見て、手を洗っていたマスターが声を掛ける。

「いらっしゃいませ。どちらでもどうぞ。」

駐車スペース側のU字のテーブルは、カウンター席よりも

少しだけ幅広く作られ、座ったときに胸元付近から上がガラス張りになっており

車で訪れた客は、先着でそのU字に仕切られる中に吸い込むかたちで駐車することができる。

横幅は、フェラーリを停めてもドアを開けられる余裕を確保してあった。

つまり、自分の車をガラス越しに眺めながら、気の合う仲間と言葉を交わすことができた。

諒は偶然、自分の車をバックで駐車していたため、リアに向けて窄まる

ジュリアのラインを見ながらくつろぐことができた。

マスターがお冷を持ってくるのが見えた。

「2000ですね!」とマスターがスポットライトを浴びた

2000GTVに目線を向けながら話しかける。

諒は軽く会釈をして、ワクワクしながら次の言葉を待つ。

「こちらにきたお客さんは、みんな私の車に着いて来て常連になるんですよ。」

諒は、笑った。

「今日は、ジュリアが釣れたかな〜って思ってたら、来てくれて・・・。ありがとうございます。」

諒が、はにかむ。

「GTA本物ですか?」と諒は失礼なことを聞いた。

「もちろんですよ。今度、明るい時にでも来てください。イジッてますから。」

「ぜひ、見せてください。」とそこまで言うと、比奈がメニューを突きつけ、会話を切った。

「諒、注文。」っと少しだけ急かした口調で間に入った。

冷静を取り戻して、諒がエスプレッソを注文した。

「私は、カフェラテ。」と比奈が続く。

マスターが「ごゆっくり。」と言うと、カウンターへと戻って行った。

「諒は、車の話となると、すぐ夢中になるんだから。」とヤキモチを焼く。

諒は、苦笑いをしながらいい訳をする。

「だって、本物のGTA1300ジュニアだよ。どれだけすごいかわかる?」と

興奮して、比奈を説得しようとする。

「知らない。」とだけ言い、目線を外に逃がす。

諒は、比奈のテンションに合わせるように、会話をやめた。

外では、ライトアップされた2000GTVが、ひややかに二人のやりとりを見守っていた。




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