クランクシャフト ダイナミックバランス
クランクシャフト。2000GTVは、フルカウンターになっています。
スチール製の鍛造で表面処理加工(タフトライト加工)が施してあります。
タフトライド処理と、タフトライト処理は、同じ処理方法ですが、名前ははっきり異なるようです。
以下HPから転記した説明です。三和メッキ工業(株)
タフトライト処理とは、ドイツのデグサ(株)の商品名です。迅速塩浴軟窒化処理の一種で、520〜570℃、10〜120分で行う液体窒化処理です。
この窒化処理による表面硬度は、本格的ガス窒化法の場合の約半分で、ビッカース硬度570前後です。
塩浴の主成分は、青化カリウム、シアン酸カリウム、炭酸ソーダが含まれていて、チオシアン酸が分解して発生する窒素と炭素が鋼材の表面に侵入して窒化と浸炭が進行します。硬度は比較的低いですが、耐摩耗性、耐疲労性、耐食性が良いので高価な特殊鋼の代わりに自動車部品、工具などを作るのに用いられています。
タフトライド処理は、タフトライト処理と同様の処理で、日本パーカーライジング(株)の商品名で、
こちらでも加工できるようです。旭千代田工業
金属処理について、詳しく書いてあります。管理人も勉強させて頂きました。
※基本的な考え方
バランスを取る前に、ラッピング、オイル穴拡大、メクラプラグの打ち直し、洗浄などは、すべて完了しておきます。
そうしないと、後で行う場合は、バランスが狂ってしまいます。
個人で行う軽いラッピング程度であれば問題ないかもしれません。
その場合は、オイル穴へ、研磨剤を入れないように気を付けて作業し、必ずラッピング後には洗浄しましょう。
私のクランクシャフトは、振れが1000分の15。曲がりは、1/2で1000分の7.5です。
これは、かなり優秀なクランクシャフトだと判断しています。
私のエンジンは、OH前でも7500回転までストレスなく回っていたのも、これが一つの理由であると
判断しています。
実際、バランス取りの前に、一体で計測してみた結果も信じられないほどの精度で
バランスが取れていました。。。(感激)
まず、私は、オイル穴拡大と、メクラプラグの打ち換えは、行いませんでした。 メインジャーナルとクランクピン部もすり傷等なく、軽くラッピングするだけでそのまま行けそうです。 画像は、今度装着するフロントプーリーです。 洗浄しても、前の塗装や、錆びなどがありますので、バランス取りの前にキレイに仕上げたいと思います。 |
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サンドブラストが終わったところです。 シャフト部との接触面と、フロントのクランクシール接触面は、キレイに磨き上げていますので、ブラストしないように、マスキングしています。 綺麗な、梨地に仕上がりました。 洗浄をキレイに施し、耐熱スプレーで処理します。 |
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耐熱のつや消しブラックで塗装が完了しました。 バルタイの中心角測定用のヤスリによる刻みは、重量が変わってしまうのを避けるために、タガネで刻みを付けるようにします。 少しでもバランスの崩れることが無い、方向で考えていきます。 |
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※フロントプーリーボルトも事前に、鏡面研磨しています。 プーリーボルト、ワッシャー、フロントプーリー、ワッシャー、オイルポンプドライブギア、クランクシャフトスプロケット、クランクシャフト、フライホイール、クラッチカバーまでを全部分解前と同じ位置で組み付け、バランス取りの前がどれくらいの状態であるかをチェックします。 ジュリアのクランクは、プーリーボルトの締め付けとフライホイールボルトを締め付けることができるように、加工しやすいように、クランクシャフトのカウンターウエイトにバイスで挟めるように刻みが入っています。オイル穴加工の際も利用できます。 そこを固定して、それぞれを規定トルクで締め付けます。 プーリーボルトを10kgf・m、フライホイール側を13kgf・mで締め付けています。 フライホイール締め付けボルトは、すべて右回りで番号を刻んであり、組み付け時には、同じ位置でボルトを組み付けます。 |
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フライホイールの締め付けボルト6穴にジュリア後期型専用のジグを装着しています。ジグの材質はクロームモリブデン鋼です。 日本車用の汎用性のある、ジグも検討中です。 すでに、この画像を見て、「あれ?」と思った方は、不思議ではありませんね。バランス取りをやったことある方なら、その違いに気づいていると思います。 この測定ジグは、すでに超精密にバランス取りが完了しています。 最小ダイヤルの最小メモリの最小振れで、機械が感知できなくなるレベルを意味しています。4000/rpm すでに、アルファの前期型8穴用の専用ジグも検討してもらっています。このHPで依頼がある可能性大???(笑) |
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専用ジグを装着して、クラッチカバーをセットしても、充分測定できるだけの長さを確保できています。 クラッチカバーのボルトも全て番号を刻んであり、右回りで組み付け時には同じ所にセットされています。 もちろん、規定締め付けトルク2.5kgf・mで装着されています。 ※クランクバランサーにセットされるのは、フライホイール側です。 この意味が分かっていただけましたでしょうか? |
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これが、クランクバランサーのメーターパネルです。 番号順に説明します。 1,測定シャフトのロックとフリー 2,回転スタートボタン 3,緊急時のストップボタン 4,クランクシャフトの現在の回転数 5,3段階の感知レベル 6,盛り込みモードと切削モードの切り替え 7,センサー取り付け箇所、測定物選択モード 8,右側センサーの精密目盛り 9,左側センサーの精密目盛り 10,右側センサー箇所での最大振れ地点表示 11,左側センサー箇所での最大振れ地点表示 12,右側センサーへの仮想電位差ウエイト目盛り 13,右側センサー箇所で、5,の3段階切り替え 詳細精度目盛り(10目盛り) 14,左側センサーへの仮想電位差ウエイト目盛り 15,左側センサー箇所で、5,の3段階切り替え 詳細精度目盛り(10目盛り) |
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正式名称は、エレクトロニックダイナミックバランシングマシーンAR400/GV
Serie Dです。最高計測回転数は、4500/rpmです。 「CEMB」チェンブS.p.Aと言うイタリアのメーカーです。 フェラーリでも同メーカー品が使用されているそうです。 クランクシャフトの中間メインジャーナル部でベルトを接点として駆動させるタイプと、こちらのように、横からシャフトで連結されるタイプと、大きくは2種類あります。 どちらのタイプも長所、短所があるようです。 ベルト駆動の長所は、フロントプーリーをセットして一体でバランス取りを行えること。 短所は、ベルトの接点になる部分に黒いスジは入ってしまうこと。また、高回転まで回すことが難しいこと。(回転軸を直接側面からベルト接触で駆動させるため) シャフト式の短所は、プーリー側シャフトにカップリングを装着して、クランクシャフトに連結しないと回転できないので、本当の意味では、プーリーまで一体でバランス取りができない。 長所は、ベルトで駆動しないので、黒いスジは入らず、軸回転の力で高回転域までのバランス取りをチェックできること。 |
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ここまで、説明したら分かると思いますが、要するに、ベルト駆動とシャフト駆動の良いところを組み合わせたのが、この内燃機屋さんのすごい所なんです! フライホイール側で駆動することにより、フロントプーリー側もセットでバランス取りが行えること。 シャフト駆動により、メインジャーナルのスリップ痕を気にすることなく、軸回転力で高回転まで回せること。 メインジャーナルへベルトを強く押しつけて回転させる事自体、バランス取りに影響がでないのか??? 不思議に思うところではあるのですが。。。(^_^;)商品としてある以上は、ちゃんと考慮してあるのでしょうね。 シャフト式は、通常シャフトにオプションのカップリングをメーカーから購入してセットするため、プーリーセットでバランス取りが出来ないのが最大の欠点です。その分、比較的簡単にバランス取りできるそうです。 それを、車種事に専用のジグを作製することで、フライホイール側でセットすることを可能とし、しかも超精密にジグ単体をバランス取りすることで、こういう方法が可能になっているのです。 専用ジグを作れない業種の方なら、諦めるしかないでしょうか。。。 この測定ジグは、実は、企業秘密になる予定でしたが。。。(^_^;) 「公開しましょう!」と強気な発言を頂きまして、掲載しております。 それと、肝心な事は、どのバランス域で「OK!」と判断されるか!!!です。 各ショップで、どこまでバランスを取っているのか? 実際はユーザーレベルでは、分からないのが、このバランスチューニングです。 重量合わせなら分解してチェックも可能ですが、動バランスとなると、まず 不可能に近いと思います。 そこで、やっと私の出番なのです。(笑) どの域で私が「OK!」としたのか!!!!(^-^) 通常のバランス調整の域を超えているとこは、たしかでしょう。。。。(爆) この調整域まで「お願いします。」と言った場合は。。。。どれだけの請求になるのかな(^_^;) 時間工賃が莫大ですし、フライホイール専用ジグは、別料金ですから。。。(^^;)(^^;)(^^;)(^^;) 自分でダイナミックバランスを取ることに、特別許可頂いた寛大な内燃機屋さんに感謝いたします。<(_ _)> |
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とりあえず、低速回転設定で回してみます。 低速回転側の最小は、約450/rpmです。 画像は、速そうに見えるようにシャッタースピードを遅くしています。 エンジン内部を見れた気がして、これだけで感動しました。 私のクランクシャフト一体バランスは、どれだけ狂っているのでしょうか?ドキドキです。(*^_^*) |
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これが、数値です。 回転数は、455/rpmですね。 なんと、なんと!!!!!!!!!!! かなり、優秀なんですよ!!!内燃機屋さんもびっくりされていました! というのも、とある日本車のクランクでは、一番レベルの低い設定でも針が振り切れることがあったそうです。(*_*) 実は、私のクランク一体も、一番レベルの低い方から針の振れをチェックして行ったのですが。。。全然振れないんです! そして、次々と感度の高い方へ移っていき!!! 最終的には、一番シビアな設定にしてしまいました。 この機械は、一番シビアな設定では、100分の1g/cmの慣性重量を拾うと聞いています。 0.1g単位の電子天秤で重量合わせを行った私にとって、100分の1g/cmがどれだけシビアなのかは、想像できます。しかも、回転慣性時での不釣り合い重量でです。 だたし、クランクにネジレが生じています。(デジタルメモリ部) 90刻みの目盛りですので、正反対でネジレています。 ですが、回転慣性重量はどちらにもある程度出ていますが、前後の重量差は比較的少ないようですね。(針の目盛り) |
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この結果を踏まえて、まずは、単体でバランス取りを行います。 やっと、始まりですね。(^^;) こちらも同じイタリア、CEMBのプレートバランサーです。 単体をこちらのプレートバランサーで先にバランス取りして、最後に先ほどの機械にセットして、一体バランスを取るのです。 ですから、こちらの単体バランスは、それぞれに料金が発生します。 ダイヤルの説明です。 1,過重量箇所の位置指定(広範囲) 2,過重量箇所の位置指定(精密) 3,最小精密目盛り 4,3段階切り替え(最小は、10分の1g/cm) 5,ダイヤメーター 回転スピードは固定で、900/rpmです。(実測) |
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クラッチ、クラッチカバー、フライホイールなどは、製品時にある程度バランス取りを行ってあるそうです。 それをチェックして、さらに私のこだわる域までバランス取りを行います。 クラッチ板もバランス取りを行いますが、これ自体は、クランク一体のダイナミックバランスには、セットしません。 当然の話ですが、どの位置でクラッチ板が吸い付くかは、皆目わからず、一体で取る意味はないからです。 ですが、単体でバランスをチェックして調整することは、やってもいいと思っています。 |
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こちらは、フロントプーリーボルトです。 このボルトまでセットでバランス取りするために、フライホイール側から固定させるのです。 ここまでこだわらない場合は、料金は安く済むのでしょうね。 下に移っているのは、プレートバランサーに、小型旋盤の三つ爪チャックをセット出来るためのSSTを作製し、チャックを固定してあります。 そのため、チャックに挟めるものは、何でもバランスが取れてしまいます。ホイールバランスの何十倍もの精度です。 当然、チャックをセットした状態で、超バランス取りを行い、掴む測定物に合わせて、チャックの位置も変わりますので、その都度チャックの精度を修正しながらの、バランス取りになります。 ダイヤメーターの設定も測定物で調整します。 かなりシビアな測定になります。 |
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こちらは、フライホイールです。 私のは、軽量クロモリフライホイールです。 この製品のバランスをチェックしました。 結構、いい精度で加工してあることがわかり、ほっとしました。(^_^) |
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こちらは、一度、バランスを取ったフライホイールに、今度は、クラッチカバーを装着して2つセットで再度、カバー側を削って調整しています。 クラッチカバーは、通常は、スポット溶接などで重量を増やしてバランスするのですが、私は、強度的に問題無いと思われる部分で調整しました。 もちろん、実際に装着する場所と同じ位置で合いマークして装着し、ボルト番号を刻んであり、同じ位置に同じボルトをセットして、規定トルクで締め付けて、バランス取りを完了しています。 |
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プレートバランサーによる、バランス取りは、単体である程度バランスが取れているとはいうものの、 この域(私がこだわる位置)までのバランスは、取れていませんでした。 フライホイールと、クラッチカバーはそれぞれ、バランス精度は上げてやりましたが。。。 ※問題は、クランクプーリーとプーリーボルトなんです。 実際、突き詰めて単体バランスを取ると、いけないんです。 その理由は、クランクシャフトに合いキーが入っているからです。 当然、セットされる、クランクプーリーと、プーリーボルトには、キーの相手になるため 凹部が存在します。 っということは、単体でバランスを完全に取ってしまうと、クランクシャフトにセットされたときに キーと接合されるシャフトの凸部がプラス重量となってしまい、その部分で、単体バランスが 不釣り合いになってしまうのです。 それを避けるために、フロントプーリーとプーリーボルトは、完全に単体バランスを取れないのです。 ここまで、バランス率を考えて作業する所がどれだけあるでしょうか。。。。納得してしまいました。 |
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そして、再度すべて一体で組み付けをします。 始めに測定した時と、比べて単体のバランス取りで、どれだけ良くなったか??を測定しました。 以前は、たまたま単体バランスとクランク側バランスのアンバランス量が相殺されてる可能性もあったかもしれませんね。 今回は、プレートバランサーで、単体でバランス取りを行っていますので、その部分は、かなりいい精度だと思います。 しかし、それをクランクとセットにした場合は、話は別です。 セットになると、ネジレの節の関係で重量も変化してきます。 その結果が左画像です。左側の針がプーリー側です。 右側の針がフライホイール側ですが、左の重量がかなり、「0」に近づいているのがわかりますか?? 単体バランスの成果ですね。もちろん、ダイヤル設定は一番シビアな設定です!!はっきり言って、すでに、バランス取りのレベルは、これで終わっています。(笑) ネジレは、残ったままですが、設定レベル的にすでに問題無いんですよね。初めから、バランス取りしなくても、OKだったりして。。。 |
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そして、左画像がダイナミックバランス終了の状態です! あえて、「超ダイナミックバランス」と言わせてください。(^_^;) 左右の針が「0=慣性重量誤差なし」測定不能です。 下のデジタルダイヤル値。79と57ですけど、これは画像を記録した時点の話でして。 実際は、ずっと数字は変化します。40ぐらいの間を数値が変化していて、まったくどこを示しているのかわからない状態になります。 これは、ネジレがどこにあるか測定不能と言うことを意味します。 要するに、まったくネジレが無い!ということです。 クランクの回転数は、450/rpmです。 |
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針が「0」を示したまま、止まっています。 これから、どんどんクランクの回転数を上げていきます。 高速回転でのチェックに入ります!!!! 回転数は、1228/rpmです。 だいたい、アイドリング超ぐらいですね。 デジタルダイヤルは、定まりません。(^^) この後、1300rpm程度で一度、小さな振動の山が出てきましたが速度を上げると、すぐに収まりました。 実車の場合は、ほとんど体感できない内に通過するでしょうね。 |
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2004年なので、2004rpmで記念撮影(笑) 実際は、顔が引きつっています。 心臓がバクバク言っていました。。。。(^^;)(^^;)(*_*) クランクシャフト一体が、むき出しで目の前で2000回転しているんですよ!!! 旋盤が1500回転で回るのも強烈に怖いのに・・・(>_<) 間違っても、回ってるクランクの横には、立てません!!! 手に汗握りながら、緊急停止ボタンから放せません(>_<) |
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パネルを撮影するために、機械から離れてるのも怖いです。 手ぶれしそうになるのを必死に我慢しています。 実際クランクセットのダイナミックバランスを3000回転超で、チェックしているところは、少ないと思います。 この測定機の限界回転数は、4500rpmですが、高速での共振点がどこに出てくるか?は、わかりませんが。ジュリアの通常回転域なら、問題なさそうですね。 高速回転側になっても、針は安定していました。 しかし、小さな振動の山が発生している時だけは、ネジレや数値に変化が出ます(最小の1目盛り程度)が、そこを超えるとまたバランスします。 |
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車のホイールといっしょで、クランクのウエイトが逆回転しているように見えたり、フライホイールは完全に止まっているように見えたりと、すごいことになっています!! シャッタースピードが速くても、これだけ回転しています。。(>_<) 恐ろしや。恐ろしや・・・・2500rpmを超えると、うなり音も発してきました。 実際は、クランクケース内で、空気抵抗や、オイル抵抗なども作用しているんですよね〜〜〜。 それこそ、エンジン内部では、これが瞬間7500rpmしているんですよ。。。。 F1なら、18500rpmですよ〜〜〜。(*_*)(*_*) |
今回は、ここまでバランスが取れているから、この回転域まで回せました。。
数値が上がってきたり、回転音に異音があれば、高回転域では、回せません。
動バランスを完全に取ることは、エンジン振動やフリクションロスは改善される方向へいきます。
特に、私のエンジンは、低、中速トルク重視に仕上げる予定で、その分、犠牲になる方向として
相反する、高レスポンスも狙っていました。そのため、ピストンから下の重量合わせと
動バランスを突き詰める方向で、高回転側への吹け上がりを改善させることを
念頭において作業してきました。
クランクシャフトのバランスについて
動バランスは、質量と回転中心からの距離の二乗との積の釣り合いを意味しています。
難しい公式は。。。(^_^;)
動バランスが狂うと、クランクシャフトがベアリングメタル叩き、振動が発生し、フリクションも増大します。
クランクシャフトは、エンジンが回転しているときに曲げとネジリの力が同時に働きます。メタルクリアランス
をレース仕様では広く取りますが、そのクリアランスいっぱいに振れ回っているのです。
その振れをなるべく押さえるために、ダイナミックバランスは重要になってきます。
ピストン、コンロッド側からの力が、クランクピンに伝わり、反作用で、メインベアリング側にも影響を
及ぼしますので、クランクピン上の重量や、燃焼室容積にも影響があり、総合的なバランスを必要と
してくるのは、いうまでもありません。
動剛性を上げるためには、ガス力と慣性力に打ち勝つ、クランクシャフトの剛性が必要です。
そのためには、メインジャーナル部と、クランクピン部の径を大きくし、オーバーラップを増やすことで
回避されます。ちなみに、2000GTVのクランクを式に当てはめてみます。
ピストンストロークが88.5mm、メインジャーナル径が60 Ø、クランクピン径が50
Øとなり
次のようになります。(60+50−88.5)/2=10.75mm
円柱の場合の剛性は、径の4乗で増えるので、オーバーラップが増えれば、それだけ剛性も確保
できることになり、ショートストロークエンジンが剛性面でも有利であると言えます。
一般的実用車エンジンで、オーバーラップは、5mm程度を言われていますので、そういう意味では、
一番ロングストロークの2000でも、クランクシャフトの動剛性には配慮していることになります。
ですが、クランクシャフトのジャーナル径とピン径を大きく取るということは、それだけ重量が増大して
回転慣性モーメントも大きくなり、レスポンスが落ちてしまうことになり、ジュリアらしくない特性になって
しまいますね。その辺とのバランスも設計時点で充分に考慮されていることだと思います。
それでも、クランクシャフトの曲げ変形は、ベアリングを痛めるため、フルカウンター(カウンターウエイト
で各スローごとに慣性力をバランスさせる)や、ベアリングキャップとシリンダーブロックと一体化して
軸受けを固めて剛性力を上げる、ラダービームを現代車では、採用しています。
ちなみに、2000は、フルカウンターを採用しています。
ねじれ振動を低減するために、共振点に回転数を合わせて、ダイナミックダンパーを使用し
小さい振幅の山に分散させる技術なども、レース用では使われたりするそうです。
エンジンが高回転すると、その回転域の中には必ず固有振動数が発生し、回転による加振力の
入力回数が固有振動数と一致し、共振点が発生します。共振点(大きな振動の山)については、
10000rpm以下では、あまり影響無いようですが、それ以上では、ねじれ振動で破損する恐れが
あり、共振点を下げるための対策が必要になってきます。ジュリアでは、問題ない?(^^;)
水平対向にすることでクランク全長を短くし、左右に2気筒ずつオーバーラップさせることで
カウンターウエイトを必要とせず、左右対称にレイアウトし、尚かつ剛性を確保させる
日本のメーカー、ス○ル。そういう意味では、究極のクランクシャフトと言えますね。
今回、できるだけのバランスを取ったつもりですが、それでも問題は沢山あるんです。
・エンジン内のクランクに当たる空気抵抗による狂い。
・クランクウエイトがオイルをかき混ぜることによる狂い。
・フロントプーリーをVベルトで駆動し、オルタネーターとウォーターポンプを回転させることに
・よるフリクションでのプーリー側に掛かるアンバランス。
・オイルポンプギアや、クランクスプロケットに掛かるフリクションによるアンバランス。
・メタル合わせの狂いによる慣性力のアンバランス。
・ピストン、コンロッド側の狂いによるアンバランス。
・燃焼、膨張の不均等なガス圧によるアンバランス。
その他にも沢山アンバランスな要素は考えられます。
アルファロメオ 2000GTVのエンジン構造的なことは変更せず、今供給できる部品で
できるだけのことをする。
そういう意味で、今回バランス取りとして、「やるだけやった。」つもりでいます。
エンジン特性としては、中・低速トルク重視として考え、
重量バランス、ダイナミックバランス、燃焼室容積バランスで、高回転域まで
持っていきます!!!(予定)
バルブタイミングがキーポイントになりそうですね〜(^_^)