シートリングは耐熱鋼です。

ヘッドバルブガイド抜き打ち
シートリング作製(外注)

洗浄作業が終わり、一度内燃機加工へ出すことにしました。

これからの作業工程を考えて行った場合は、ロスを無くすために一番いい行程を

考えます。大まかなには、ポート測定研磨という、大仕事がありますので、ガイドを

抜き打ちしないと行けません。っていうことは、抜く前に、セット長を確認しておかないと

いけません。ここでいう「セット長」とは、分かりやすく、一般的に通用する言い方ですが、

正確には、「バルブステム飛び出し寸法」のことです。本来、セット長という言い方では、

アウタースプリングセット長と、インナースプリングセット長という、また別の場所の長さを意味します。

ガイドや、シートリングを抜いてからでは、セット長がいくつでセットされていたのか分からなくなります。

これは、非常に大事なことです。アルファのマニュアルにも無い規定値であり、一般に出回らない情報

ですが、ここで公開します。皆様のために。

そうは、言っても、このデータがチューニングエンジンデータという訳ではありませんよ。

あくまでも、今まで問題なく機能していた「セット長」というだけであり、データとして普通は知らない

であろうと思って公開するだけです。間違いのないように。

ガイドを抜いてから、ポート研磨や、ある程度燃焼室を研磨した後で、シートリングを打ち代えれば

いいのではないか?という意見もありますが、そうすると、シートリング打ち代えた後、ポートとリングの

間で段差が生じて、再度加工作業がいることになります。

ですから、今回は「シートリングの打ち替え」はしていますが、シートカットは、まだ行っていません。

それは、燃焼室研磨の際、すり傷が付いても、良いようにです。しかも、当たり面自体も少し余裕を

持って作ってもらっていますで、3面同時シートカットの際に、セット長に合わせて正確にカットされるため

問題なく、作業できるのです。

純正のシートリングでは、材質や、リングの精度的にちょっと、よろしくない。という判断で

今回は、インテークもエキゾーストもシートリングは作製することにしました。

しかも、材質的に「すばらしい」と定評のある、「耐熱鋼」です。バルブ摺り合わせが堅くて苦労しそう(^^;)


福岡市内の其の内燃機屋さんに依頼しました。

以前から、技術や、加工マシンの充実度など噂は聞いており今回古い外車のヘッドにも係わらず、快く受けてくださいました。
有名なレーシングショップでも、外車のヘッド加工はお断り。が多い中で、何も問題なく「OK」頂けたことが、うれしいですね。

シートリング打ち換えが終わって、戻ってきました。

本来なら、どのようにしたか!を詳しく説明したい所ですが、

内燃機加工作業の取材は、シークレット。となりました。
店舗名、住所の公開も諸事情によりしないでほしいとのこと。

でも、私との対応はすばらしく、親切、丁寧で私自身も勉強することがいっぱいでした。

決して、取材拒否だからと言って、怪しいショップではありません。ご理解ください。

知りたい方は、個人的にメールでお教えします。
ガイドもすべてきれいに抜けています。当たり前ですけどね。

このシートリングの輝きを見てください。耐熱鋼です。
このエンジン用に作製されたものです。

燃焼室研磨時に、傷が付いてもいいように、燃焼室側にも少しだけ高さを持たせて作製してあります。

こういう、加工は、既製品では、出来ないですね。

それに比べて、大事なポートが削られていることが、とても悲しいです。計測したら、分かることですが、これ以上は、拡大する気になれません。。。(-_-;)
こちらは、エキゾースト側ポートです。

工程的に近いうちに内径計測に入ります。
こっちがインテークポートです。

インテークもエキゾーストも今は、梨地仕上げのままですが、このポートの加工、研磨がエンジンチューニングの「カギ」と言えるでしょう。

どのように加工して行くかは、お楽しみに。

でも、一言。
私は、プロではありません。自分なりの知識と判断です。まちがった加工をするかもしれません。あくまでも参考にする程度と思ってください。

どこのショップでも、ポート研磨、シートカット、バルブにショップの経験やノウハウが詰まっています。

正しかったか、どうかは、シャシーダイナモ計測までわかりません。
よ〜〜く、見てる方は、気づいているかもしれませんが、左の画像の黄色囲みの3本線。インテークもエキゾーストもすべてポートの下に入っています。画像は、ヘッドをひっくり返していますので、実際は、下側になりますね。

これは、どう考えても、鋳型のバリとは思えない。ってことは意図的なものになりますね。

ここって、水路との関係ですごく薄いんです。
熱膨張の影響も考えて、リブを作ることで強度を狙ったと推測します。

削り取っても問題ないのかもしれませんが、私は、きれいに残すことを考えます。

※ただし、バルブリフターは同じものを再利用するため長さに入れません。
このセット長とは、スプリングシートとワッシャーの厚みを含みません。
使用していた、バルブのセット長(バルブステム飛びだし寸法)
実測値 インテークバルブ エキゾーストバルブ
気筒 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番
カムの最大
リフト量
10.07 9.87 9.96 10.11 10.12 10.00 10.0 9.98
タペット
クリアランス
0.37 0.46 0.40 0.43 0.50 0.50 0.53 0.56
バルブリフター - - - - - - - -
シム厚み 1.564 1.535 1.605 1.592 1.834 1.800 1.830 1.798
セット長 42.44 42.39 42.38 42.48 41.95 41.95 42.10 42.04
新たに使用するバルブを以前のシートリングで計測してみる
インテークバルブ エキゾーストバルブ
気筒 1番 1番
セット長
(参考)
42.33 - - - 41.77 - - -


セット長は、内燃機屋さんに実測してもらいました。ヘッド底面に対して垂直に計測できる
ジグを当て、基準値からの差でセット長を計測するやり方です。

個人でジグを作製する場合は、ガイドにセット出来て、しかも底辺が垂直であり、42mm〜43mmぐらい
の円柱状のジグを精度よく加工して作製しないといけません。

それが、シートカット時のセット長合わせで重要なデータとなっていきます。


考察;
今の時点でどういうことが言えるのかというと、現在のセット長で、バルブスプリングは線間密着していないということ。

それは、最小で41.95mmまでは、線間密着していなかったことを意味する。
また、バルブを奥へ追い込む範囲としては、セット長として42.48mmまでは、追い込めるということです。

新しくセットするバルブについて、以前セットしていたシートリングでセット長を計測した場合
どちらも、ステム長は、短いようです。

新旧のバルブスプリングの線間密着長を計測してみないとわかりませんが、新しいスプリングは強化品ですので、セット長との比率を考察しながら、線間密着しない範囲で、セット長を決める予定です。

これが、バルブタイミング調整と同じぐらい難しく、重要な調整になってきます。
上からと下からと、挟まれながら、調整することになります。

最終的には、シムの厚みでタペットクリアランスを同じにするしかありませんが、私の場合は、カムの摩耗具合が分かっているだけに、逆に厄介ですね(笑)その分、意図的にクリアランスを操作し、作用角か、実質のリフト量を合わせることもデータ的に可能になってきます。

この問題と別に、新しく組む強化バルブスプリングも考慮しないといけません。

インテークバルブスプリング 以前付いていたもの
    平均値
新しく付ける強化品
    平均値
密着長の差
アウタースプリングの密着長 22.90mm 23.20mm +0.3mm
インナースプリングの密着長 21.70mm 20.50mm −1.2mm

インナースプリングの線間密着長が、かなり差がありますが、マイナス方向なので、遊びがなければそんなに問題ではないですが、アウターは、線間密着長が長くなっています。ってことは、いままでと同じセット長では、密着する可能性はありますね。(と言っても、たぶん大丈夫なんですけど(^^;)できれば、最大リフト時で1.5mmぐらいの余裕がほしいところです。

それとは別に、バルブを奥へ追い込むと、セット長が長くなり、密着は、カバーできるのですが、薄いシムが必要になるし(これも、私は対応できるんですけどね(^_^;)、圧縮比が落ちることにもなります。このように、すべてにおいて影響が出てくるのです。

新品のスプリングもすべて計測し、重量あわせをし、一番バランスのいい組み合わせでセットする予定です。

ですから、カムの真円の中心から、ピストン頭部の先まで、すべて長さの影響があるのです。

このことを理解して、作業しないとうまくエンジンは回らないものになってしまいます。

詳しい話は、シートカット、バルブガイド圧入の時に発表することになると思います。

難しい話になってすみません。<(_ _)>

内燃機加工代金
加工項目 単価 個数 小計
バルブガイド抜き打ちのみ 300 2,400
シートリング入れ替え共 2,000 16,000
シートリング製作 3,500 28,000
合計 46,400
消費税 2,300
支払い金額 48,720円

※個人的には、加工代金は高いと思っています。
  福岡市内で、加工技術として信用できる内燃機屋さんは、ここしかないと思っています。
  今回は、ガイド抜き打ち作業等、急いでいたこともあり、私の所在に近い所でもあるので
  加工代金が高いとは思いましたが、半端な送料を出して、信用できない内燃機屋さん
  へお願いするよりは、安心できるという気持ちの問題もあります。

  もちろん、作業内容的なものでは、関西方面の方が安いです。往復の送料を考えて
  見積もりした結果次第では、郵送することも考えたいと思っています。